カルカソンヌ(Carcassonne)はフランス南部に位置し、中世の城塞都市の姿を今に伝えることから、「中世の宝石」とも称される美しい街です。
二重の城壁と52の塔に囲まれた城塞内には石畳の路地や歴史的建造物が並び、中世ヨーロッパの雰囲気をそのまま感じながら散策を楽しめます。
カルカソンヌ
カルカソンヌは、高台の城塞都市シテ(Cité)と、そのふもとに広がる下町(新市街)ヴィル・バス(Ville basse)が共存する歴史ある街です。
さらに街の南側には世界遺産のミディ運河が流れ、城塞の重厚な雰囲気とは異なる、木々に囲まれた穏やかな水辺の景色も魅力となっています。
ミディ運河
カルカソンヌに到着して、まず向かったのはミディ運河(Canal du Midi)です。
ミディ運河はカルカソンヌの市街地を流れる水路で、大西洋と地中海を結ぶため17世紀に造られたそうです。
ミディ運河では運河沿いの景色を楽しむクルーズが人気で、木々に囲まれた水路を進みながら南フランスらしい穏やかな時間を過ごせます。
下の写真に見える湾曲した丸いエリアは、船が水位を調整しながら進むための「閘門(こうもん)」という水門です。
ミディ運河は場所によって水位に高低差があるため、閘門内で進む先の水位に合わせて上下させる仕組みになっているそうです。
船を安全に移動させるために、17世紀からこのような仕組みが使われており、当時の高度な土木技術を現在でも感じられる場所でした。
ヴィル・バスからシテへ
次に目指したのは、カルカソンヌ観光の中心となる城塞都市シテです。
ミディ運河を後にして、アンドレ・シェニエ広場(Square André Chénier)を横目に市街地を歩きながら、街並みの風景を楽しみつつシテへ向かいました。
通り沿いで目に留まった特徴的な建物は、カルカソンヌに残る旧病院のドーム(Dôme de l'Ancien Hôpital)です。
18世紀の歴史的建造物で、かつて病院中央にあった礼拝堂の遺構として、現在はドーム部分と門だけが保存されているそうです。
歩いて行くと、オード川に架かるポン・ヴィユー(旧橋)(Pont Vieux)が見えてきました。
14世紀に築かれたこの石橋は、ヴィル・バスとシテを結ぶ重要な通路として使われ、現在もカルカソンヌを象徴する美しい景観を残しています。
橋の先には高台に広がるシテの城壁が姿を現し、目の前に近づく壮大な城塞都市への期待がさらに高まりました。
ポン・ヴィユー(旧橋)の上から眺めるオード川の風景も美しく、穏やかな水面には青空や周囲の木々が映り込んでいました。
中世の面影を残す通りには石造りの風景が広がり、長い歴史を刻んできた街の雰囲気を感じます。
高台のシテを目指して
賑やかな市街地を抜けると、視界に入ってきたのは石造りの重厚な外観のサン・ジメール教会(Église Saint-Gimer)です。
一見すると中世から残る古い教会のように見えますが、19世紀に建てられたものだそうです。
そして、すぐ目の前にはコンタル城(Château Comtal)と、シテを囲む城壁がそびえる壮大な景色が広がっていました。
ところで、シテへ入る代表的な入口は、東側のナルボンヌ門(Porte Narbonnaise)と西側のオード門(Porte d’Aude)の2か所です。
今回は、ポン・ヴィユー(旧橋)を渡り西側から歩いて来たため、本来なら坂道を上ってオード門へと向かうのが王道のルートとなります。
しかし、ここでルートを知り尽くした添乗員さんの本領発揮で、まさかのショートカットルート?
ツアー参加者の皆さんが健脚揃いだったこともあってか、道とも言えないような草むらをぐんぐんと上っていく、ちょっとした冒険ツアーのような観光が始まりました。
見上げると、青空に突き刺さるようにそびえ立つ、カルカソンヌの巨大な二重城壁!
通常の舗装されたルートからでは味わえない、城壁の圧倒的な高さと威圧感を真下からダイレクトに体感。
城壁の間をさらに登り、ふと後ろを振り返ってみると、息をのむような絶景が広がっていました!
正直なところ、もうどこをどう通って進んでいるのか全く分からない状態でした。それでも、古い石造りの美しいアーチ門をわくわくしながら通り抜けたり。
先ほど近くで眺めたサン・ジメール教会を上から眺め、全体像を綺麗に見下ろしたり。
そんなワイルドなルートを歩いたことは、今振り返ってもものすごく印象深く、最高におもしろい体験でした!
そんな未舗装の斜面がようやく終わり、綺麗に整備された石畳の通路へと足を踏み入れました。ここはコンタル城の真裏にあたる、西側の高台エリアです。
どこをどう歩いているのか分からなかった道のりでしたが、石畳の路地のオード門通りに無事たどり着いていました。
オード門から入る場合には、多くの観光客が通るおなじみのルートです。
シテ散策
カルカソンヌのシテは、オード川を見下ろす丘の上にそびえ、ヨーロッパを代表する城塞都市です。
「歴史的城塞都市カルカソンヌ」として1997年にユネスコの世界遺産に登録され、人気を誇る観光地となっています。
マルクー広場
城郭内に入り、まず向かったのはマルクー広場(Place Marcou)です。
広場の中心には、カルカソンヌの元市長ジャック・テオフィル・マルクー(Jacques Théophile Marcou)のブロンズ胸像が置かれ、 周囲のカフェやレストランのテラス席は観光客で賑わっていました。
サン・ナゼールバジリカ聖堂
サン・ナゼールバジリカ聖堂(Basilique Saint Nazaire)は美しいステンドグラスで知られ、ロマネスク様式とゴシック様式が融合した聖堂です。
11世紀から14世紀にかけて異なる様式が継ぎ足されたため、見る方角によってまるで別の建物のような表情を見せています。
北側外観は、ロマネスクの重厚さとは対照的で、ゴシック様式の華麗なバラ窓と八角形の小塔が目を引きます。
聖堂内部は、重厚な石柱が高い天井を支え、リブ・ヴォールトの美しい構造が目を引きます。中世ゴシック建築ならではの高さと重厚感を間近に感じることができました。
中でもひときわ目を奪われたのが、聖堂内を鮮やかに彩るステンドグラスの美しさです。
赤や紫、青などの色彩が差し込む光を受けて輝き、重厚な石造りの空間に幻想的な光と彩りを添えていました。
また、聖堂の西側後方には、16世紀に制作されたとされる歴史あるパイプオルガンが置かれています。
改修や修復を重ねながら現在まで受け継がれてきたもので、長い歴史を感じさせるものでした。
コンタル城
コンタル城(Château Comtal)は、城塞都市シテの内部に築かれた、要塞としての役割を持つ城です。
12世紀に建設が始まり、深い堀や跳ね橋、落とし格子などを備えた堅固な造りは、実際に間近で見ると中世の城が持つ緊張感を感じさせます。
外観
まずは、コンタル城の正面入口へ。ここから先は、コンタル城の見学エリアです。
石橋を進み、城門を通り抜けました。
城の敷地に入り、中庭を抜けて博物館エリアに進みます。
この案内マップを見ると、カルカソンヌ全体の構造とコンタル城の位置関係がよくわかり、見学ルートの順路なども確認できます。
展示品
城内の展示品は1つの大きな部屋にまとまっているわけではなく、見学ルートに沿っていくつかの異なる部屋に分かれて置かれています。
かつての邸宅を彩った、ゴシック様式の美しい石の窓枠
鮮やかな色彩に目を奪われる!騎士たちの戦闘シーン
信仰と芸術を今に伝える、キリストの受難の物語
彫刻が施された、古代ローマ時代の大理石製棺
ロマネスク美術の傑作の一つ、精巧な彫刻が美しい洗礼盤
勇敢な姿を今に伝える、名もなき高貴な騎士の石棺のフタ
その他にも、一つ一つの石碑や彫刻に刻まれた人々の想いが色濃く残っているような、貴重な展示物が多く見られました。
城壁ルートと眺望
彫刻などが展示されているエリアを通り抜けると、城壁の上へと登り歩いて見学できます。
すぐ真下に見えたのは、近くで眺めたサン・ジメール教会です。
城壁のルートはかなり長く、いくつかの塔の中を見学したり、見ごたえたっぷりです。
とんがり屋根のタワーは、まさにおとぎ話のお城のようで、歩いているだけでワクワクしてしまいます。
中世の重厚な城壁からは、オレンジ色の瓦屋根が連なる街並みと遠くの山々を一望でき、その壮大なパノラマに大感動でした。
ナルボンヌ門
カルカソンヌの散策をたっぷり楽しみ、帰りはシテの東側にある代表的な正門、ナルボンヌ門(Porte Narbonnaise)へ向かいました。
二つの大きな塔に挟まれた重厚な門構えは、城塞都市の正門らしい大迫力。
行きは草むらを上るという思いがけないルートでしたが、帰りは重厚なナルボンヌ門をくぐり、改めて中世の街を歩いていたことを実感しました。
カルカソンヌを訪れた感想
ミディ運河の穏やかな風景を眺めた後、ポン・ヴィユーを渡り、高台のシテを目指して草むらを上っていったことは、今でも忘れられない思い出です。
道とも言えないような斜面を進みながら、巨大な二重城壁を真下から見上げたり、途中で振り返ってヴィル・バスの街並みを見下ろしたりと、軽いアドベンチャー気分で楽しめました。
シテに入ってからは、サン・ナゼールバジリカ聖堂のステンドグラスやコンタル城の展示品を眺め、長く続く城壁ルートを巡ることで、石造りの建物だけでなく、そこに残された中世の歴史まで間近に感じることができました。
最後にナルボンヌ門をくぐって城塞を後にし、カルカソンヌの壮大さを身体全体で楽しめた旅になったと実感しました。
カルカソンヌ周辺マップ
ピンクライン:実際に歩いた散策ルート