フランス南部のプロヴァンス地方にあるアルル( Arles)は、古代ローマ遺跡が残る世界遺産の街で、フィンセント・ファン・ゴッホゆかりの地としても知られています。
中世には宗教都市として発展し、旧市街にはサン・トロフィーム教会や旧大司教館など、時代ごとの歴史を伝える建築が今も数多く残されています。
今回はアルルの旧市街を歩き、遺跡、歴史建築やゴッホゆかりの場所を訪れました。
ゴッホゆかりの地と歴史遺産が残る旧市街散策
ゴッホが療養した エスパス・ヴァン・ゴッホ
エスパス・ヴァン・ゴッホ(L'espace Van Gogh)は、ゴッホが療養生活を送った「旧アルル市立病院」の跡地です。
外観は重厚な石造りの壁に覆われており、落ち着いた佇まいです。 開館時間内であれば無料で自由に入れるので、アーチ状の通路をくぐり抜けて中へと進みました。
通路を抜けると雰囲気は一変!花々が美しく咲く中庭が目の前に広がります。
ここは、ゴッホが療養中に描いた『アルルの病院の庭』を再現した場所で、作品の世界を身近に感じられるのです。
中庭を囲むように続く黄色い回廊は、ゴッホの絵画を思わせる景観となっていました。
回廊の一角にはゴッホの胸像が置かれています。
良く見ると、胸像の台座はトランクやヒマワリなど、ゴッホを象徴する造りとなっており興味深く感じました。
アルルの夏の庭園
アルルの夏の庭園(Jardin d'été)は古代劇場に隣接し、市民の憩いの場として親しまれている緑地です。
庭園内にはゴッホを讃える記念碑が建てられています。アルルの風景に魅了されて数々の名画を残した彼は、この街を象徴する存在であると言えるでしょう。
クロワトル通りを通って古代劇場へ
次に、庭園の北に隣接する古代劇場へ向かって、クロワトル通り(Rue du Cloître)を歩いていきました。
歴史を感じる細い路地を進み、風格ある石造りのアーチを通り抜けると、視界が一気に開けて古代劇場前の広場へとたどり着きます。
通りの突き当たりには、歴史を感じさせる建物がありました。
現在は行政機関として利用されていますが、もともとは18世紀に建てられた貴族の邸宅旧クルトワ・ド・ラングラード館だったそうです。
古代ローマの遺跡群
アルル古代劇場
アルル古代劇場(Théâtre Antique d'Arles)は紀元前1世紀末のローマ時代に建設された劇場で、アルルを代表する世界遺産のひとつです。
クロワトル通り側から眺めると、劇場を象徴する二本のコリント式円柱がひときわ目を引き、約2000年前の建造物とは思えない存在感に目を奪われます。
今回は内部には入らず、通りに沿って周囲を歩きながら石壁やアーチ越しに遺構の一部を眺めましたが、それだけでも長い歴史を十分感じることができました。
アルル円形闘技場
アルル円形闘技場(Arènes d'Arles)は古代劇場に続き、紀元1世紀末頃に造られたローマ時代の円形競技場です。
約2万人を収容できたとされ、多くの市民が集う娯楽施設として、かつて剣闘士競技などが行われたそうです。
現在も闘牛やコンサートなどに利用されており、約2000年前の建造物が今なお現役で使われていることに驚かされます。
次に、円形闘技場からアレーヌ通りを通り、カフェ・ヴァン・ゴッホへ向かいました。
ゴッホが描いた カフェ・ヴァン・ゴッホ
カフェ ヴァン ゴッホ(Cafe Van Gogh)は、ゴッホの代表作『夜のカフェテラス』のモデルとして知られる名所です。
現在の建物は当時の姿をそのまま残しているわけではありませんが、絵画同様に鮮やかな黄色の外観となっています。
※なお、長年にわたり人気のカフェとして親しまれてきましたが、運営会社の問題により営業停止となっているそうです。 外観を眺めることができますが、名画ゆかりの場所だけにカフェ再開を願っています。
建物前には、『夜のカフェテラス』を再現したパネルが置かれ、実際の風景と見比べることができます。
カフェ ヴァン ゴッホが面するのは、古代ローマ時代に整備されたフォーラム広場(Pl. du Forum)です。
現在はカフェやレストランが並び、観光客や地元の人々が行き交う活気ある場所となっています。
広場に立つのは、フレデリック・ミストラル像(Statue Frédéric Mistral)です。
彼はプロヴァンス出身の詩人で、郷土文化の保存と発展に大きく貢献し、1904年にノーベル文学賞を受賞したそうです。
アルル市庁舎
フォーラム広場から南方向に歩いていくと、石造りの重厚な建物が目を引きました。
下の写真は、アルル市庁舎(Hôtel de Ville d'Arles)を北側から眺めたものです。 17世紀に建てられた歴史ある建物で、旧市街を代表する行政施設のひとつとなっています。
中に入り歩き進むと、階段の上部には大理石像が置かれ、下には二体のライオンの石像が凛々しい姿で構えていました。
この大理石像は、古代劇場跡で発見された「アルルのヴィーナス」のレプリカで、本物はルーヴル美術館で展示されているそうです。
市庁舎内の一角とは思えず、美術館を訪れているような気分になりました。
市庁舎は中を自由に通り抜けることができ、南側に出ました。
正面側から見ると、豪華なレリーフや屋上の彫像など、バロックらしい華やかさのある外観となっています。
レピュブリック広場(共和国広場)
市庁舎の南にあるのはレピュブリック広場(Place de la République)です。
古代ローマ時代から都市の中心として発展し、現在もアルル随一の賑わいを見せる広場となっています。
中央には、古代ローマ時代に由来するオベリスクが立ち、上部に向かって細く伸びる独特の形から「アルルの針」とも呼ばれているそうです。
台座部分は噴水になっており、周囲に4頭のライオン像が見られました。
サン・トロフィーム教会
レピュブリック広場の東側に面して建つサン・トロフィーム教会(Église Saint-Trophime)は、11〜12世紀にかけて建設されたロマネスク様式の教会です。
正面入口には「最後の審判」を題材とした彫刻が見られ、ロマネスク彫刻を代表する傑作として高く評価されています。
内部は、ロマネスク様式とゴシック様式が組み合わさった構造になっていました。
身廊は太い柱と丸みを帯びたアーチが連なり、装飾を抑えた重厚なロマネスク様式です。
奥へ進むと高窓のステンドグラスから光が差し込み、祭壇の周囲には柔らかな色彩が見られました。
旧大司教館
サン・トロフィーム教会に隣接する歴史的建造物は、 中世から近世にかけてアルルの大司教の居住と行政の拠点となっていた旧大司教館(Palais de l'Archevêché)です。
その後は市立図書館として長く市民に利用され、現在は大学施設や展示会場として活用されているそうです。
建物正面のアーチ扉から中庭までは、自由に入ることができました。下の写真は、中に入って広場のオベリスクの噴水を振り返った様子です。
旧大司教館の中庭(Cour de l'archevêché)は荒い石積みの壁に囲まれており、正面から見た整然とした外観とは異なる表情を見せていました。
中庭の右奥には小さな扉があり、サン・トロフィーム教会の回廊への入口へとつながっています。
この回廊はアルルのローマ遺跡群とともにユネスコ世界遺産に登録されており、有料施設ではありますが、時間を取って訪れたい場所の一つです。
中庭の北東角にそびえるサン・トロフィーム教会の鐘楼からは、中世ロマネスク建築の力強さが感じられました。
サンタンヌ教会
レピュブリック広場の西側に面して建つサンタンヌ教会(Église Sainte-Anne)は、かつてアルルの主要な教区教会として使われていた歴史ある建物です。
12世紀に建てられた教会をもとに17世紀初頭に再建され、装飾を抑えた古典主義様式の外観が特徴となっています。
フランス革命後に宗教施設としての役割を終えた後は博物館として利用され、現在は展覧会や文化イベントの会場として活用されているそうです。
アルルを訪れて
ゴッホの作品の舞台となった場所を実際に歩き、彼が描いた景色をたどることで、アルルが彼の創作活動に与えた影響の大きさを実感しました。
一方で、旧市街には古代ローマ遺跡や中世の教会建築が数多く残り、街を歩くだけでも長い歴史の積み重ねが伝わってきました。
ゴッホゆかりの場所や世界遺産を合わせて巡ることができたのは、この街ならではの魅力だと思います。
歴史の流れを感じながら散策できたアルルは、南フランスの旅の中でも特に心に残る街となりました。
アルル観光マップ
ピンクライン:実際に歩いた散策ルート
水色ライン:クロワトル通り