パリのセーヌ川沿いに位置するルーヴル美術館(Musee du Louvre)は、芸術の都を象徴する存在で、今回の旅でも必ず訪れたいと思っていた場所です。
世界最大級の美術館として知られ、かつて王宮として使われていた歴史ある建物内には 古代エジプトから近代絵画まで世界的に有名な作品が数多く収蔵されています。
ルーヴル美術館 - 見どころ
周辺エリア
ルーヴル美術館近隣にはパレ・ロワイヤルや歴史的街区が広がり、セーヌ川対岸にはオルセー美術館が位置するなど、 美術館と歴史建築が集まる文化エリアの中心となっています。
西側にはカルーゼル広場とチュイルリー庭園が続き、さらにコンコルド広場からシャンゼリゼ通りへと一直線に伸びる人気エリアです。
カルーゼル広場に建つのは、カルーゼル凱旋門(Arc de Triomphe du Carrousel)。
一般に「凱旋門」と呼ばれるエトワール凱旋門に比べると、比較的コンパクトで装飾が繊細で華やかな雰囲気です。
どちらもナポレオンの戦勝記念として建設された点は共通していますが、カルーゼル凱旋門は宮殿前の装飾的な門としての意味合いが強いのだとか。
細かな彫刻やレリーフ装飾が施され、華やかな印象でした。
ルーヴル美術館 - 外観
ルーヴル美術館は12世紀に要塞として建てられたことに始まり、その後フランス王家の居城として段階的に改築されていったそうです。
20世紀末にはルーヴル・ピラミッド(Pyramide du Louvre)と呼ばれるガラスのピラミッドが造られ、 歴史的な宮殿建築と現代建築が共存する現在の姿へと至っています。
ファサードは左右対称の重厚な造りで、目の前に立つと想像以上のスケールに圧倒されます。
館内の配置と見学ルート
ルーヴル美術館は、下記の3つの建物が中庭を囲む造りになっています。
- ドゥノン翼(南側)
- シュリー翼(東側)
- リシュリュー翼(北側)
館内は非常に広く展示作品も膨大なため、事前に見たい作品を絞り込み、展示位置と効率的な見学ルートを把握しておくことが重要です。
おすすめは、有名絵画が多く集まるドゥノン翼から見学を始め、シュリー翼、リシュリュー翼へと順に巡るルートです。
今回は実際に見学した数多くの作品の中から、印象に残ったものをいくつかピックアップして紹介します。
ドゥノン翼(Denon)
ルーヴル美術館南側に位置し、ルネサンスから近代に至る絵画を中心に主要作品が多く展示されています。
ルーヴルの中でも最も人気が高く、来館者が集中するエリアです。
サモトラケのニケ
ダリュ階段上部にごく普通に展示されていますが、紀元前2世紀頃に制作されたという古代ギリシャ彫刻です。
ルーヴル美術館の中でも三大至宝の中の一つとされており、階段を上るにつれて引き込まれていきます。
船首に立つ勝利の女神ニケの像で、残念ながら頭部と両腕は失われた状態ですが、強い躍動感があります。
モナ・リザ
レオナルド・ダ・ヴィンチによって16世紀初頭に描かれた肖像画で、ルネサンス期を代表する作品です。
ルーヴル美術館の数多い作品の中でも最も知名度が高く、こちらも三大至宝の中の一つとされています。
モデルや表情の解釈については諸説あり、謎を多く含む作品。いつまでも眺めていたい絵画です。
岩窟の聖母
こちらも、レオナルド・ダ・ヴィンチによって制作され、聖母マリアとキリスト、洗礼者ヨハネ、天使らが描かれた宗教画です。
場面は暗い岩窟の中でありながら、聖母マリアの表情は穏やかで、神秘的な空気が広がっています。
カナの婚礼
パオロ・ヴェロネーゼによって16世紀に描かれた巨大な宗教画で、イエスが初めて奇跡を起こした場面だそうです。
ルーヴル美術館の中でも最大級の大きさで、まずはそのスケールに圧倒されます。
青い空の下に集まった多くの人物が細密に描かれており、人々の賑わいが感じられるような場面です。
ナポレオンの戴冠式
ジャック=ルイ・ダヴィッドによって19世紀初頭に描かれた歴史画で、ナポレオンが戴冠する場面を描いています。
カナの婚礼に次ぐ大きさで、この絵も迫力満点。
ナポレオンが自ら王冠を掲げ、皇帝として権力を確立していく様がよくわかります。
アルプスを越えるボナパルト
この作品も、ジャック=ルイ・ダヴィッドによって描かれたナポレオンです。
険しいアルプス山脈を越えていく姿は、国家を導く指導者としての強い意志を象徴しています。
メデューズ号の筏
1816年に実際に起きたフランス海軍「メデューズ号」の遭難事故を題材にした作品だそうです。
救助を待ちながら漂流する人々の姿が描かれており、暗く重い画面からは絶望や混乱が感じられます。
民衆を導く自由の女神
1830年のフランス7月革命を題材に描かれたロマン主義絵画です。
中央の女性は「自由」を象徴し、三色旗を掲げて民衆を率いて前進する姿が描かれています。
『レ・ミゼラブル』のクライマックスシーンや「民衆の歌」が自然と浮かんでくるような構図で、革命の熱気が強く表現されていました。
サルダナパールの死
古代アッシリアの伝説的な王サルダナパールの最期を題材としているそうです。
人々が拘束されたり倒れたりしており、ただならぬ緊張感と危機的な状況が伝わってきます。
王は静かに見下ろしており、周りをすべて道ずれに最期を迎えようとする凄惨な場面です。
グランド・オダリスク
西洋から見た東方の文化や人物、風景を題材にし、理想化された表現で描くオリエンタリズムに分類される作品です。
後宮の女性を題材としており、柔らかな表情となめらかに強調された身体のラインから上品な美しさが感じられます。
反抗する奴隷
ミケランジェロによって16世紀初頭に制作された彫刻で、拘束された奴隷が抜け出そうとする瞬間を表しているそうです。
未完成の状態ということですが、体をひねりながら力を込める強い意志や抵抗が感じられます。
瀕死の奴隷と反逆の奴隷
この2体もミケランジェロによって同時期に制作されたものです。
右側の瀕死の奴隷は無力で崩れ落ちていく姿で「あきらめ」を表現しており、左側の反逆の奴隷は体をねじり自由を得ようとする「抵抗」を表現しているそうです。
夫婦の石棺
この作品はルーヴル美術館の中でも最も古い部類に入る古代彫刻のひとつで、紀元前6世紀頃のエトルリア文明によって制作された作品だそうです。
石棺の上に横たわる夫婦はとても穏やかな表情をしており、死後にも現世同様に平穏な日々が続くような世界観が感じられました。
プシュケーを運ぶメルクリウス
ルネサンス後期に制作されたブロンズ彫刻で、ギリシア神話の一場面を題材としているそうです。
神々の使者メルクリウスが人の魂を天上へと運ぶ瞬間を表現しており、彫刻でありながら浮かび上がっていくような動きが感じられます。
シュリー翼(Sully)
ルーヴル美術館東側に位置し、古代エジプトやギリシア・ローマなどの古代美術が中心に展示されています。
特に古代彫刻や遺物が多く、歴史や文明の流れを感じることができます。
ミロのヴィーナス
シュリー翼でまず見ておきたい作品はミロのヴィーナスです。
サモトラケのニケ、モナ・リザ、そしてミロのヴィーナスがルーヴル美術館の「三大至宝」と言われ、世界的に知られています。
紀元前2世紀頃のヘレニズム期に制作され、体を少し傾けたポージングが絶妙で、「理想の美」とされています。
この立ち姿は一見シンプルに見えますが、なかなか再現するのは難しそうですね。
失われた両腕については確定的なことは分かっておらず謎のままだそうです。それも含めて神秘的で魅力的な作品でした。
眠るヘルマフロディートス
眺める角度によって男性にも女性にも見えるような外観が特徴的な作品です。
人の姿や本質は一つに決められるものではなく、見る側の視点によって捉え方が変わるということを表現しているのでしょう。
メルポメネの像
ギリシア神話に登場するメルポメネは悲劇を象徴する女神で、手に持っているマスクは悲しみや苦しみなど避けられない運命をあらわしているそうです。
その立ち姿は凛々しく、困難を抱えながらも立ち向かっていくような力強さがありました。
ヴェルサイユのディアナ
狩猟の女神ディアナを題材とした大理石彫刻で、古代彫刻を代表する作品群の一つに数えられます。
隣に鹿を伴い、狩猟中の躍動的なポーズが特徴的です。
リシュリュー翼(Richelieu)
ルーヴル美術館北側に位置し、他のエリアに比べると比較的落ち着いてじっくりと回ることができます。
絵画、装飾美術、オリエント古代遺物などが幅広く展示されているほか、中庭に面した回廊や階段ホールには大理石彫刻群が展示されています。
ハムラビ法典
紀元前18世紀頃、古代バビロニアのハムラビ王によって制定された成文法で、黒い玄武岩に楔形文字で刻まれています。
世界最古級の成文法のひとつであり、社会生活に関わる具体的なルールを体系的にまとめたものです。
上部のレリーフの右側が太陽神シャマシュで、正義と太陽を司る神だそうです。そして、左側がハムラビ王で、神より法と権威を受け取っています。
「目には目を、歯には歯を」に代表される文言で知られ、報復の上限を決めて秩序を保つ意味合いを持っていたそうです。
ラマッス(人頭有翼牡牛像)
ラマッスは紀元前9~7世紀頃、メソポタミア世界の広域を支配したアッシリア王国の王宮城門として造られたそうです。
人間の顔に牡牛の体、背中に大きく広がる翼を持つ外観で、絶対的な権威を感じます。
レースを編む女
17世紀オランダの画家フェルメールによって描かれた作品です。
何気ない日常の場面で華やかさはないものの、自然とレースを編む手元に見入ってしまうような穏やかな風景でした。
ナポレオン3世の居室
最後に見学したのは、フランス皇帝ナポレオン3世の居室です。
ナポレオン3世は19世紀中頃にフランス皇帝となり、産業の近代化や都市整備などを進めた人物です。
ルーヴル美術館はもともと王宮として使われていた歴史を持ち、ナポレオン3世の時代にも宮殿として一部が使用されていたとのこと。
それにしても、絢爛豪華!金装飾の調度品、重厚な家具、天井画などで埋め尽くされた部屋は、眩いシャンデリアで光り輝いていました。
ルーヴル美術館を訪れて
ルーヴル美術館は見どころが非常に多く、教科書でも見たことがあるような有名作品や歴史的価値の高い作品が数多く展示されています。
一回の訪問ではとても回りきれないほどの規模と内容で、時間がいくらあっても足りないと感じるほどです。
広い館内で目当ての作品を探しながら見て回るのは想像以上に大変で、事前の下調べの大切さを痛感しました。
最後にはかなり疲れもありましたが、それ以上に「まだ見ていない作品をもっとじっくり見たい」と思わせる魅力があり、また訪れたいと感じる美術館でした。